鎌田法律事務所

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リーガルトピックス

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≪最新判例≫
保証会社が賃料を代位弁済した場合,賃料支払債務は消滅しているが,賃借人の賃料不払の事実自体が解消されるわけではないとして,賃貸借契約の解除を有効と認めた事例(福岡高裁平成28年2月29日判決 LLI/DB判例秘書)

(事案)
賃借人は平成26年6月分以降賃料の支払を怠ったので,保証会社は,6月分から12月分まで順次その賃料を代位弁済した。賃貸人は,賃借人に対し,保証会社が立て替え払いした賃料合計を5日以内に保証会社に支払うよう催告し,期限までに支払いがない場合は賃貸借契約を解除する旨を通知したが,賃借人は支払いを行わなかった。そこで賃貸人は明渡請求訴訟を提起した。賃借人は,保証会社が賃料を代位弁済したことによりその間の賃料支払債務は消滅しており賃借人に債務不履行はないし,賃貸人には何らの経済的不利益も生じていないとして解除が無効であると争った。

(裁判所の判断)
保証会社が賃貸人に対し賃料等に相当する額を支払ったことにより,その支払に係る賃借人の賃料等支払債務が消滅したことは認められる。しかし,保証会社による上記の支払は,賃貸人・保証会社間の保証契約に基づく代位弁済であって,その弁済により保証債務が消滅し,その限度で間接的に本件賃貸借契約に基づく控訴人の被控訴人に対する賃料等支払債務も消滅するものであるが,保証会社の支払によって賃借人の賃料等の不払という事実自体が解消されるわけではない。

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≪最新判例≫
準委任契約の解除に際して補償金を支払ったことに関して,株主から,補償金の支払いは不要であったとして株主代表訴訟が提起され,取締役の損害賠償責任が認められた事例(福岡高裁平成24年4月10日判決 金融・商事判例1476号2頁)

(事案)
ゴルフ場運営会社が,ゴルフ場内のレストラン運営会社とのレストラン運営委託契約を解除しましたが,これに際して,ゴルフ場運営会社はレストラン運営会社に2000万円の補償金を支払いました。レストランの売上の5%のテナント料を支払うことになっていたところ,ゴルフ場運営会社が10%に増額することを通告したことに対してレストラン運営会社が拒否し,4000万円の損害賠償を求めましたが,結局2000万円で合意ができたものでした。ゴルフ場運営会社の株主は,この補償金はゴルフ場運営会社として支払う必要のなかったものであるとして株主代表訴訟を提起し,取締役に損害賠償を請求しました。 福岡地裁小倉支部は,レストランの従業員の退職金,什器備品代,1年分の営業利益損失分の合計が保証すべき金額であったが和解金額2000万円がこれ以下であるから取締役の任務懈怠はないとして原告らの請求を退けました。

(福岡高裁の判断)
レストランの営業委託契約は準委任契約であり,各当事者がいつでも解除をすることができる。不利な時期に解除をしたときは損害賠償をしなければならないとしていることからすれば(民法651条1項),損害賠償の範囲は,突然の解除により相手方において負担せざるを得なくなった出費等に限られる。逸失利益や営業利益など,準委任契約の継続を前提とする事項については上記損害には含まれない。損害として認められるのはレストラン従業員の退職金,解約金のみであり,これと2000万円との差額分について損害賠償を行う義務をいう。

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≪最新判例≫
破産した会社において監査役の任務懈怠による会社に対する損害賠償責任が認められ,責任限度契約が適用されて損害賠償責任が限定された事例(大阪地方裁判所平成25年12月26日判決 金融・商事判例1435号42頁)

(事案)
破産したA社の代表取締役は,かねて,取締役会の決議なくあるいは監査役が反対する中3000万円の貸付や業務提携契約の内金としての2000万円の支払,多額の手形の振出を行うなどし,5億円を上回らない価値しかない山林を20万円の評価額があるとして現物出資を受け入れ,取締役会における決議・報告の内容に反して8000万円の出金をおこなうなどしました。破産管財人は,8000万円の出金による会社の損害について監査役の任務懈怠があるとして,監査役に関し役員責任査定の申立を行い,破産裁判所はその責任を648万円(報酬2年分)と決定しました。これに対して監査役,破産管財人の双方から異議の訴えが出される等したのが本事案です。

(裁判所の判断)
監査役は,代表取締役が8000万円の資金を不正に流出させるおそれがあることを予見できた。従って監査役は,取締役に対し,代表取締役による資金流出を防止するためのリスク管理体制を直ちに構築するよう勧告すべきであった。また代表取締役が監査役の指摘を受け入れないことが繰り返されたという状況に鑑みると,代表取締役の解職,取締役解任決議を目的事項とする臨時株主総会を招集することを勧告する義務もあった。取締役がこのような勧告に従う可能性はさほど高くなかったとしても,勧告をしなくてもよい理由にはならない。よって監査役には善管注意義務がある。  しかし監査役は貸付,現物出資,手形振出について反対意見を表明するなど損害が生じないよう努力した。約束手形の濫発に対する防止措置も一応構築されていたと認められる。8000万円の出金については具体的に予見することはできなかったと認められる。よって重過失があるとは認められないので,責任限定契約を適用し,損害賠償額は監査役報酬の2年分に限定される。

責任査定の裁判
役員が任務を怠って会社に対して損害を与える場合があります(例えば回収する見込みがない多額の融資の実行など)。その後会社が破産した場合,裁判所は破産管財人からの申立等によって,役員に対する損害賠償額を査定することができます(破産法178条)。査定決定から1か月以内に異議の訴えが提起されないと,査定決定は確定判決と同様の効力を有します。この制度により損害賠償請求訴訟を行う場合に比べて迅速に手続を進めることができます。

監査役による取締役の職務執行の監査
監査役には取締役の職務執行を監査する職務があります(会社法381条1項)。
監査役は取締役の不正行為等について取締役会に報告する義務を負い(382条),取締役会に出席して必要な時に意見を述べなければなりません(383条1項)。取締役会の招集請求権,招集権(383条)を有し,取締役の不正行為の差止を請求する権限を有しています(385条)。取締役が不正な行為を行って会社に損害を与えるおそれがあるときはこれらの権限を行使して職務を全うすることが必要とされます。
本判決は,損害の発生が予見されるときは,取締役の職務遂行について反対意見を表明したり,意見が受け容れられない場合は監査役を辞任することを表明するだけでは足りず,リスク管理体制の構築を勧告し,更に代表取締役からの解職,取締役解任決議を目的事項とする臨時株主総会の招集を勧告すべき義務があったと認定しています。監査役には「この程度でやるべきことはやった」と安易に考えず,事案によって厳しい対立を恐れずに職務を全うすることが求められます。

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≪最新判例≫
準共有状態にある株式について,準共有者の一人が行った議決権の行使が不適法であるとされ株主総会決議が取り消された事例(東京高等裁判所平成24年11月28日判決 判例タイムズ1389号256頁)

(事案)
A社は3000株を発行している株式会社ですが、このうち2000株はBとCの準共有状態でした。Bは、その株式について議決権行使者を誰にするかCとの間で協議をすることなく、株主総会において代理人を通じて2000株について議決権を行使し、A社はこれを認めました。そこでCは、決議方法等について法令違反があると主張して株主総会決議の取り消しを求める訴えを起こしました。第1審では、議決権行使者の指定・通知がなくても会社が同意しているから(会社法106条ただし書)議決権行使は有効であり決議に違法はないとしてCの請求を退けました。

(裁判所の判断)
これに対して東京高等裁判所は概要次のように判断して原審の判断を覆しました。
会社法106条本文は準共有状態にある株式の議決権の行使について権利行使者の指定及び会社への通知を要件として定めていますが、これは、準共有者の間で議決権の行使に関する協議が行われ、意思統一が図られた上で権利行使が行われることを想定していると解されます。従って、ただし書きについても、その前提として、準共有状態にある株式の準共有者間において議決権の行使に関する協議が行われ、意思統一が図られている場合にのみ、権利行使者の指定及び通知の手続を欠いていても、会社の同意を要件として,権利行使を認めたものと解することが相当である、ということです。
そして、本件においては、BとCの間で株式の議決権行使について何ら協議が行われておらず、意思統一も図られていないことからすれば、会社の同意があっても、Bが議決権の行使をすることはできず、Bによる議決権の行使は不適法と解すべきであるとしました。

株式の準共有
株式が相続されると相続人の間で準共有の状態になります。株式は可分給付を目的とする債権ではないので、1株1株がそれぞれ相続人の準共有となります。2000株を二人で相続したからそれぞれ1000株ずつ相続するということではありません。相続人の間では協議をして権利行使者を決めますが、協議がまとまらない場合は、最終的には相続割合に応じて過半数によって決することになります。ですから大株主に相続が発生して、相続人が五分五分で対立して権利行使者を決められない場合、たちまち株主総会の定足数不足の問題が生じることに注意が必要です。

会社法106条
株式が二以上の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。

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≪最新判例≫
株主総会の特別決議を経ないで行った特に有利な価額による自己株式の処分と新株発効における取締役の損害賠償責任(東京高等裁判所平成25年1月30日判決 金融・商事判例1414号8頁)

(事案)
A社では役員や社員持株会等の関係者の間では1株1500円で取引されていたところ、A社は、同族会社の認定を避ける目的で、取締役らに1株1500円で自己株式を売却しましたが、これを議案とした株主総会では特に有利な価額による処分であることの説明はされませんでした。その後さらに取締役等を引受人として1株1500円で新株発効を行いましたが、株式の価値について鑑定は行わず株主総会では特に有利な価額による新株発行であるとの説明はされませんでした。
A社の株主は、特に有利な価額による自己株式処分・新株発行に必要とされる株主総会の特別決議が行われなかったことについて取締役等に任務懈怠があるとして、また著しく不公正な価額による自己株式処分・新株発行であったとして、取締役等に対して、公正な価額と譲渡価額・発行価額の差額相当等を損害賠償請求しました。

(裁判所の判断)
1 自己株式の処分について

本件は非上場会社の自己株式の処分価格が問題でしたが、判決は、このような場合に価額の算定に当たって考慮する要素・判断基準について、① 自己株式処分に関する規制の趣旨、目的を踏まえ、② 処分の経緯、目的、数量、会社の財務状況等の諸般の事情を考慮して判断する、としました。その上で、本件については、公正な価格はA社の取得時の取得価格と同額の1株あたり1500円とするのが相当であると結論付け、その結論に導くために、① A社の株式は役員や社員持株会等の関係者の間では1株あたり1500円で取引されてきたこと、② 本件自己株式処分は、実質的には同族会社の認定を受けることを回避するために取締役から取得した株式の買い戻しに過ぎないこと、③ その取得から処分まで1年程度しか経過していないこと、の3点を挙げました。
この結果、自己株式の処分については公正な価格で処分したから特別決議の手続を行わなかった任務懈怠はないとして取締役の責任を否定しました。

2 新株発効について

他方、新株発効については次のように取締役の任務懈怠を認めました。
新株発効の際の株式価値については、第三者割当の方法による新株発行に関する規制の趣旨、目的に照らすと、新株発行時における旧株式の客観的な交換価値を基準とすべきとし、非上場会社においては、新株発行当時の会社の資産や状況等の諸般の事情を考慮して事案にふさわしい方法によって判断するのが妥当であるとしました。そして本件では、当時鑑定が実施されていないことなどからDCF法を基本として株式価値を1株あたり7,897円から7,113円と認め、公正な価額は7,000円を下らないと結論づけました。
そして裁判所は、特に有利な発行価額による新株発行であったとして株主総会の特別決議を経なかったことを取締役の任務懈怠と認め、1株あたり7,000円と1,500円の差額を損害と認めました。

自己株式を処分したり第三者割当で新株を発効する場合、株式の処分価額・新株発行価額をいくらにするかは最初に考えなければならない問題です。鑑定などによって1株の価額を算定し、その価額(公正な価額)で取引等をするのなら良いのですが、その価額よりも低いと問題になります。
特に有利な価額で自己株式を処分したり新株発効をすると、既存株主の株式の価値を損なうことになりかねないので、株主総会の特別決議が必要とされます。
しかし本判決は、自己株式の処分時については「公正な価額」は諸般の事情を考慮してきめるとして1株あたり1,500円であるとし、他方、新株発行については「公正な価額」は客観的な交換価値であるべきだとして1株あたり7,000円を下らないとしました。
閉鎖会社、同族会社では、自己株式の処分や新株発行の際に、専門家に株価の価値の鑑定までしてもらわないで実施することもあるかもしれません。しかし問題となってからでは遅いので、株式の価値を適正に算出して行うことが重要です。

「特別決議」(会社法309条2項)
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成(ただし定款で一定範囲で変更可能)。普通決議(議決権を行使できる株主の有する議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成)に対比される。特別決議は、合併、会社分割、定款変更など会社法が定める一定の重要な意思決定について必要とされる。M&Aで34パーセント(あるいは67パーセント)の株式シェアが問題とされるのはこの特別決議ができるかどうかという点にある。

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≪最新判例≫
公開買付けの適用除外に当たるか否かの解釈

証券取引法施行令7条5項4号(平成17年政令第355号による改正前)の「当該株券等」は、特定買付け等の対象となっている種類の株券のみを意味し、特定買付け等の対象になっていない種類の株券が含まれる余地はないとして、カネボウ株式会社のスポンサーとなった者が同社のC種類株式を公開買い付けによらず買い付けた行為が証券取引法違反とならず、不法行為による損害賠償責任を負うことはないとされた事例。

(法令解説)
有価証券報告書を提出しなければならない発行者の株券等を、当該発行者以外の者が、証券市場外で買付ける場合は、原則として公開買付けによらなければならない。

例外として、①「株券等の所有者が少数である場合として内閣府令で定める場合」で、②「当該株券等に係る特定買付け等を公開買付けによらないで行うことにつき、当該株券等のすべての所有者が同意している場合として内閣府令で定める場合における当該特定買付け等」※には、公開買付けによらないで買付けを行うことができる(証取法施行令※※ 7条5項4号)。

そして、①については、「株券等の所有者が25名未満である場合」(他社株府令※※ 3条の2の4第1項)とされ、②については「同意する旨を記載した書面が当該株券等の全ての所有者から提出された場合」(他社府令※※※ 同2項)とされている。

(事案)
カネボウ株式会社は、普通株式の他、A種類株式、B種類株式、そしてC種類株式(議決権のみを有し利益配当請求権を有しない)を発行していた。同社は、株式会社産業再生機構の支援を受けることになったところ、スポンサーとなった者がC種類株式の株主2名全員から同種類株式を買付けるにつき、公開買付けによらず、同株主2名全員の同意書を取り付けて、買付けを行った。

(下級審の判断)
一審判決は、前記他社府令の「株券等」、「当該株券等」は、買付けの対象となった種類株式の株主の同意で足りるとして本件を証券取引法違反にあたらないとした。

他方、控訴審判決は、反対の判断を行った。

その根拠は、① 法令の文理解釈、すなわち、「株券等」については特に限定が加えられていないから、買付け対象となっている種類株式にかかる株券だけでなく、普通株式を含め同社の発行する「株券等」すべてを意味する。 ② 平成18年法令と平成17年法令は、法、施行令のレベルでは文言は全て同じであるところ、改正後の平成18年他社府令の定めをみると、当該買付け対象株券に関するルールと当該買付け対象外の株券等に関するルールに関して区別して規定し、改正前の規定の要件を緩和したということができ、このような規定ぶりからすると、「株券等」「当該株券等」は買付け対象外の株券を含むことは明らか。 B 制度趣旨、すなわち、特定の種類株式だけを買付けの対象としても、その買付けが会社支配権に影響を及ぼすようなものであるとすると、買付け対象外の株券等の所有者に対しても、買付けの透明性、公正性を確保する必要がある。

(本判決の判断)
「しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

(1)平成15年政令第116号及び同年内閣府令第28号による改正により、施行令7条5項4号、他社株府令3条の2の4第1項及び第2項において、25名未満要件及び同意要件をいずれも充足する特定買付け等については、当該特定買付け等を行う者及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が3分の1を超える場合であっても、公開買付けによる必要がないものとされ、公開買い付け規制に新たな例外が設けられたことは、前記3のとおりである。上記改正は、企業活動の活性化のためには、事業再編等を容易にできるようにする必要があるにもかかわらず、上記改正前における公開買付け規制が、経営支配権の移動を伴う株式等の相対取引を制約し、事業再編等の支障となっていたことから、事業再編等の迅速化及び手続の簡素化を図ることなどを目的として行われたものであって、25名未満要件及び同意要件を充足する特定買付け等については、公開買付けによらず買付けを行いうるものとすることがその目的に資するとの判断に基づくものである。

ところで、旧証取法27条の2第1項は、株券等の買付け等を行う者が特定の種類の株券等のみを買付け等の対象としうることを前提として、買付け等の対象としようとする種類の株券等の買付け等についての公開買付けの要否を規律したものであるから、同項5号の規定を受けて定められた25名未満要件及び同意要件も、買付け等の対象としようとする特定の種類の株券等の特定買付け等について、これを公開買付けによらずに行うための要件を定めたものと解するのが合理的である。そして、事業の再編等のためには、その再編等のために発行された特定の種類の株券等のみの特定買付け等をすることが必要な場合がある上、有価証券報告書の提出義務を負うのは、証券取引所に上場されている有価証券を発行する会社等(旧証取法24条1項)であるから、一般に、その会社が発行する株券等の所有者が多数に及ぶことは明らかであって、このような実情や上記改正の目的をも考慮すると、上記各要件は、買付け等の対象としようとする特定の種類の株券等の特定買付け等を前提として定められたものというべきである。上記要件にいう「株券等」を当該特定買付け等の対象とならない種類の株券等(普通株式にかかる株券を含む。)も含めたすべての株券等を意味するものであると解すると、上記各要件が充足される余地は実際上極めて限定されたものとなり、事業再編等の迅速化及び手続の簡素化のために上記の各規定が設けられた趣旨がおよそ没却されることになる。

以上に加え、特定買付け等が公開買付けにより行われるか否かは、当該特定買付け等の対象となる特定の種類の株券等の所有者の利害に直接影響するものであるものの、その株券等の所有者において当該特定買付け等を公開買付けによらないで行うことに同意しているのであれば、その株券等の所有者にその株券等の公開買付けによる売却の機会を保障する必要はないことから、同意要件を設けたものであって、特定買付け等を行うものにおいて買付けの対象としない他の種類の株券等があるとしても、その所有者の利害に重大な影響を及ぼすものではないものとして、その同意は必要とされなかったものと解するのが相当である。
(略)

以上によれば、施行令7条5項4号、他社株府令3条の2の4第1項及び第2項所定の「株券等」には、特定買付け等の対象とならない株券等が含まれると解する余地はないものというべきである。」

本判決は、法改正が、事業再編等の迅速化、手続きの簡素化を図ることなどを目的としたものであることを重視し、25名未満要件、同意要件を当該種類株式単位で判断すればよいとした。 実際、上場企業の総株主数が25名未満ということはありえないから、原審のように、買付け対象株式以外の株式についてもこれらの要件を充足しなければならないとすると、法改正の趣旨が没却されること著しい。

原審は、公開買付けの原則を重視しつつ、改正前後の他社株府令の規定の構造に注目して立法者意思を見出しているように思われ、このような法解釈のやり方は一種理路整然として美しいが、そのために、事業再編の簡易・迅速化という法改正の目的を見失っている。

※「特定買付け等」:株券等の買付け等を行う相手方の人数と、当該買付け等を行う日前60日間に、証券市場外で行った同じ会社の株券等の買付け等の相手方の人数との合計が10名以下である場合の買付け等
※※平成18年政令第377号による改正前の証券取引法施行令
※※※平成18年内閣府令86号による改正前の発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令

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≪企業の動き≫
株式交換に関連して株式買取価格決定申立事件が係属していたところ、企業が、裁判所の決定に対して即時抗告を申し立てたと公表(株式会社インテリジェンス、株式会社USEN 平成22年4月2日)

株式会社USENのIR情報
株式会社USEN(以下「USEN」)は、平成22年4月2日、株式会社インテリジェンス(以下「インテリジェンス」)との間で行った株式交換に関連して、これに反対する株主1名から会社法797条1項に基づく株式買取請求を受け、東京地方裁判所に株式買取価格決定申立事件が係属していたところ、1株当たりの株価が448円とする決定がなされたこと、USENがこれに対し即時抗告を行ったことを公表しました。
またインテリジェンスも、この株式交換に反対する株主らから会社法785条1項に基づく株式買取請求を受け株式買取価格決定申立事件が係属していたところ、1株当たりの株価が8万7,426円とする決定がなされ、これに対し、インテリジェンスが即時抗告を行ったことを公表しました。

USENとインテリジェンスの株式交換
USENは平成18年7月にインテリジェンスを連結子会社化し親会社となりましたが、インテリジェンスが上場会社であることのグループ会社管理上の理由から、完全子会社化することとなり、平成20年9月30日を効力発生日として、USENを完全親会社、インテリジェンスを完全子会社とする株式交換がなされました。
本件の株式買取価格決定申立事件は、この株式交換に反対する、USENの株主、インテリジェンスの株主の双方からなされた株式買取請求に関して起こされたものです。

株式買取請求
株式交換に反対する株主は、株主総会に先立って反対の意思を通知しかつ株主総会において反対の議決権を行使して、自己の所有する株式を公正な価格で買い取るよう請求することができます(株式交換完全子会社:会社法785条1項;株式交換完全親株式会社:797条1項)。
株主は、株式交換の効力発生日の20日まえから前日までの間に請求しなければなりません(会社法785条5項、797条5項)。
買取価格について、会社と株主の間に合意ができたときは、会社は効力発生日から60日以内に株式買取価格の支払をしなければならないこととされています(会社法786条1項、798条1項)。
そして効力発生日から30日以内に協議が整わないときは、会社または株主は、その期間満了の日後30日以内に、価格の決定の申立てを行うことができます(会社法786条2項、798条2項)。
USENとインテリジェンスの場合は、効力発生日が平成20年9月30日なので、東京地方裁判所における株式買取価格決定申立事件の決定までに1年3、4か月ほどかかったことになります。

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≪最新判例≫ 
退職した社員が競業会社を立ち上げ顧客を奪った行為が自由競争の範囲内とされた判決(最高裁判所平成22年3月25日)

最高裁判所第1小法廷は 従業員が勤務先(産業用ロボットや金属工作機械部品の製造等を業務とする会社)を依願退職した後にその勤務先と同業の会社を立ち上げ、競業行為を行い、元の勤務先の顧客が奪われたという事案において、自由競争の範囲内であって不法行為を構成しないという判断をしました(平成22年03月25日 最高裁判所判決)。

「前記事実関係等によれば、上告人Y1は、退職のあいさつの際などに本件取引先の一部に対して独立後の受注希望を伝える程度のことはしているものの、本件取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用することを超えて、被上告人の営業秘密に係る情報を用いたり、被上告人の信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったことは認められない。また、本件取引先のうち3社との取引は退職から5か月ほど経過した後に始まったものであるし、退職直後から取引が始まったAについては、前記のとおり被上告人が営業に消極的な面もあったものであり、被上告人と本件取引先との自由な取引が本件競業行為によって阻害されたという事情はうかがわれず、上告人らにおいて、上告人Y1らの退職直後に被上告人の営業が弱体化した状況を殊更利用したともいい難い。さらに、代表取締役就任等の登記手続の時期が遅くなったことをもって、隠ぺい工作ということは困難であるばかりでなく、退職者は競業行為を行うことについて元の勤務先に開示する義務を当然に負うものではないから、上告人Y1らが本件競業行為を被上告人側に告げなかったからといって、本件競業行為を違法と評価すべき事由ということはできない。上告人らが、他に不正な手段を講じたとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。
以上の諸事情を総合すれば、本件競業行為は、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず、被上告人に対する不法行為に当たらないというべきである。なお、前記事実関係等の下では、上告人らに信義則上の競業避止義務違反があるともいえない。」

(裁判所HP 裁判例情報 最高裁判所判例集 平成21年(受)1168号損害賠償請求事件 平成22年03月25日最高裁判所第一小法廷判決 破棄自判 原審名古屋高等裁判所)

従業員は、就業規則に退職後の競業禁止が規定されていたり、その旨特別に合意をしている場合には、退職後に元の勤務先と競業を行うことはできません(もっとも無制限に禁止が認められるわけではなく、従業員の職種などを考慮しつつ、競業禁止の期間・場所的範囲、制約に対する対価支払いの有無などによって、合理的な制約と認められなければなりません。)

このような競業禁止規定(合意)がない場合は、原則として、従業員は退職後に元の勤務先と同じ業務であっても自由に競業することができます(職業選択の自由)。
ただ、この場合であっても、その競業行為の内容・態様が自由競争の範囲を逸脱し違法、不当と認められるときは、民法上の不法行為を構成し損害賠償責任が発生します。

本判例は、退職のあいさつの際などに元の勤務先の取引先の一部に対して独立後の受注希望を伝えること、その意味で本件取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用する程度のことは、その結果として元の勤務先の取引先が奪われたとしても、その行為自体としては自由競争の範囲内であることを示したものといえます(なお、具体的な事案に対する判断であるので、どこまでが許される自由競争の範囲内といえるのかは、個々の事例によって個別に判断する必要があります。)

本判決で言及している、本の勤務先の営業秘密に係る情報を用いたり、信用をおとしめたりするなどの行為は、直ちに不正競争防止法の問題が生じることになります。

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